紅茶の生産量は世界第2位。
かつての国名からセイロンティーとしても有名なスリランカは、紅茶好きにとって必ずと言ってよいほど耳にする国名です。
紅茶の生産国として、そして紅茶を中心とした観光地としても人気のスリランカ。
今回は、紅茶とは切っても切れない関係を持つスリランカについて、紅茶の歴史や、茶の始まりなどについて掘り下げていきます。
また、スリランカは多種多様な茶葉の生産を行っておりますが、今回は代表的な茶葉についてもご紹介します。
紅茶好きにはたまらない、スリランカの魅力を歴史を紐解きながら一緒にみていきましょう!
>>歴史よりもスリランカ紅茶について教えてくれ!という方はこちら
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東洋の真珠 スリランカ
セイロンの名でも知られるスリランカとは
スリランカとはどのような国か。
恥ずかしながら、私も紅茶を通して興味を持つまで、国名以上のことは知りませんでした。
ですが、セイロンティーという言葉は多くの方が耳にしているのではないでしょうか。
スリランカはインド南東に位置し、1948年までイギリスの植民地でした。
自治領のセイロンとして独立したことで、その歴史をスタートします。
1972年には、国名をセイロンからスリランカ民主社会主義共和国と改めています。
かつての国名からスリランカで作られる紅茶はセイロンティーと呼ばれ、世界中で親しまれています。
ポイント
セイロンとは「獅子=ライオンの島」という意味。
スリランカ国旗に描かれているライオンからも、スリランカにとって重要な意味があることがわかります。
ライオンは、かつてスリランカに存在したシンハラ王朝から由来するもので、王朝をライオンの子孫が建国したという神話から。
スリランカは「聖なる光り輝く島」という意味です。
輸出大国スリランカ
紅茶の生産量は世界第2位のスリランカ。
輸出量は世界第1位を誇り、世界へ紅茶を最も輸出している国です。
かつて紅茶王トーマス・リプトンにより世界中へスリランカ紅茶を広めたと言われています。
ポイント
トーマス・リプトンはご存じ、イギリスの紅茶ブランド「リプトン」の創業者です。
日本ではキリン「午後の紅茶」として有名です。
スリランカはその気候から1年を通して茶が収穫できます。
特にキャンディなどの品種はいつでも栽培されていることで有名です。
安定した生産がされていることが、輸出大国としてのスリランカを支えています。
スリランカ紅茶の始まり
コーヒーの栽培を夢見た男
現在、スリランカといえば紅茶というイメージを誰もがお持ちでしょうが、かつてはコーヒー産地として有名でした。
世界第2位のコーヒー生産国であったスリランカですが、1868年にスリランカを襲ったサビ病により大打撃を受けてしまいます。
コーヒーの生産は望めなくなり、生産者は決死の思いで茶の栽培を始めました。
そんな生産者の中に、その後「紅茶の神様」と呼ばれるジェームス・テイラーもいました。
スコットランド出身のテイラーはスリランカに渡り、コーヒー栽培の助手としてスリランカにわたりましたが、茶葉の栽培や処理について研究をしており、早くから茶栽培に心血を注いでいました。
サビ病によりスリランカが紅茶栽培に転換している頃、ジェームス・テイラーの栽培手法は高く評価され、他の農園にも広がります。
テイラーの茶葉はロンドン市場でも人気を高め、その後、スリランカ紅茶を世界中に広めていきます。
スリランカそのものが紅茶に適した気候であったこともあり、紅茶の生産国として一気に拡大、現在の紅茶大国として世界中に知れ渡るようになりました。
紅茶の王様
スリランカ紅茶を語る上で、テイラー同様欠かせない人物がいます。
「紅茶の王様」と呼ばれたトーマス・リプトンです。
世界的に有名なリプトンの創業者であるトーマス・リプトンは、1890年にスリランカへ渡り、ウバに広大な土地を購入し、栽培を始めました。
アッサム種の栽培をしているリプトンは、商才にも優れた男性です。
ブレンディングと呼ばれる技術を用い、それまでの紅茶にはない味わいを表現しました。
また、「茶園から直接ティーポットへ」をスローガンに掲げ、手頃で質の高い紅茶作りを実現しています。
ポイント
当時としては画期的な流通を確立し、上質な紅茶を手軽に楽しめの世の中をつくったことで、紅茶の王様と呼ばれるようになります。
また、リプトンの紅茶事業は、イギリスの貿易にも大きな恩恵をもたらしています。
その功績からヴィクトリア女王から「サー」の称号を得ています。
彼を呼ぶ際には親しみを込めて「サー・トーマス・リプトン」と呼びましょう。
中央山脈とモンスーンが生んだ様々な紅茶
スリランカの気候は、乾燥地帯と湿潤地帯に分けられます。
茶の栽培には当然雨が必要になります。
スリランカ紅茶の栽培に適している湿潤地帯は、世界遺産である中央山脈~南西の海岸にかけて広がっています。
茶葉の香りや味は、標高によって大きく左右されます。
ポイント
中央山脈があるおかげで、スリランカ紅茶の多様性が生まれています。
また、スリランカでは主に5つの産地により紅茶が生産されています。
イギリス統治時代を反映し、2,000フィート(約600m)毎に区分され、高産地・中産地・低産地と分類されます。
ハイグロウンティー(高産地)
標高1,200m以上の工場で生産されている紅茶をハイグロウンティーと呼びます。
ハイグロウンティーは一般的に味が濃く、独特な味わいと爽やかな渋みなどをもつため、ミルクティーにされることが多いです。
ウバ・ヌワラエリヤ・ディンブラは3大ハイグロウンティーと呼ばれ、特に人気を博しています。
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ミディアムグロウンティー(中産地)
標高約600m~1200mの工場で生産されている紅茶をミディアムグロウンティーと呼びます。
ミディアムグロウンティーは力強い味わい、より豊かな香りを内包します。
一方、渋みは抑えめで、飲みやすいバランスの取れた紅茶が生産されます。
キャンディ Kandy
ジェームズ・テイラーが開いた産地としても有名。癖のないすっきりとした味わいはアイスティーや様々なアレンジティーのベースとしても使われます。
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ローグロウンティー(低産地)
標高約600m以下の工場で生産されている紅茶をローグロウンティーと呼びます。
渋みは少なく、水色が濃いのが特徴で、味わいが濃いので、チャイやミルクティーなどに使用されることが多いです。
ルフナ Ruhuna
スモーキーのような香りで人気のルフナ。
チャイ用にも人気を博し、日本でも独特な香りにファンが多い紅茶です。
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ポイント
現在では、7大産地と分類されることが多いですが、今回はわかりやすいよう5大産地による分類でご説明致しました。
7大産地では、高産地にプッセッラワ、低産地にサバラガムワが加わります。
歴史を知って更に美味しく
今回は、スリランカ紅茶の歴史や背景を解説しました。
雑学も多く含みましたが、これらを知ることで、より紅茶を選ぶ際や淹れる際に楽しくなります。
紅茶大国として有名なスリランカですが、その歴史は約130年前と意外と浅いことに驚いた方も多いのではないでしょうか。
普段何気なく味わっているスリランカ紅茶について、少しでも興味をもつ手助けになれたら幸いです。